事業の趣旨・目的
就職氷河期を過ごした人は現在、30代半ば~40代半ばを迎え、このままあと5年~10年が経過すると、安定的な生活基盤を持たないまま高齢期を迎えるひとが増え始め、年金や医療費等の社会保障への致命的なダメージとなりかねない。2019年経済財政諮問会議では、非正規雇用371万人のうち正規雇用を希望していながら不本意に非正規雇用で働く者が少なくとも50万人と公表。今後、専門性が高いプロフェッショナルを求める時代に入るため、専門的知識・技術を学びなおしにより習得すれば、より活躍の機会は増えると考える。本事業では、これらの求職者に対して短期リカレント教育プログラムを提供し、資格や技術を身につけ、自信をもって再就職につなげて、今後の人生にやりがいと安定を供給できるようにする。
福山市は製造品等出荷額が約2兆円で、広島県内では広島市に次ぐ規模であり、製造業はまさしく備後地域の基幹産業でもあるが、経済産業省の調べによると、人材不足は94%以上の大企業・中小企業において顕在化しており、32%の企業は「ビジネスにも影響が出ている」と回答している。ITの導入はワークフローも含めた施工手順の「標準化」を図り、必須作業漏れの監視、現場毎に運用方法が異なる場合や、書類の整理が煩雑な場合など、統一した運用で作業漏れや作業ミスを防ぎ、業務効率が向上することが期待できる。
当校の既存学科「ITビジネス科」の科目をカスタマイズし、IT基礎力に加え、モノづくりに関連するCAD・3Dプリンター、プログラミング力を学びなおし、スキルアップした人材を輩出することにより、業界全体の効率化と生産性向上につなげていく。
就職氷河期世代を取り巻く現状、課題とその解決策についての提案者の考察
🔶就職氷河期世代の現状、課題
「経済財政運営と改革の基本方針(令和元年6月21日閣議決定)」によると、いわゆる就職氷河期世代は、現在、30代半ばから40代半ばに至っているが、雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った世代であり、その中には、希望する就職ができず、新卒一括採用をはじめとした流動性に乏しい雇用慣行が続いてきたこともあり、現在も、不本意ながら不安定な仕事に就いている、無業の状態にあるなど、様々な課題に直面している方がいる。
全国での対象者数は正規雇用を希望していながら不本意に非正規雇用で働く方が少なくとも50万人、就業を希望しながら様々な事情により求職活動をしていない長期無業者、社会とのつながりを作り、社会参加に向けてより丁寧な支援を必要とする方などが100万人程度とされている。
就職氷河期世代が抱える固有の課題としては、希望する就業とのギャップ、実社会での経験不足、年齢の上昇等が挙げられている。再就職を検討する際に、無資格・未経験であることで、ITを利用しての仕事内容に一歩踏み出せず、現状維持を続けている方も多いのが現状である。
🔶リスタートプログラムによる安定就労
経済産業省「IT 人材需給に関する調査(平成31年3月)」によると、AIやあらゆるモノがネットにつながるIoTなど先端的なITを担う人材が2030年に45万人不足する恐れがあると試算した。急増する需要に人材の供給が追いつかないためで、AIでは12万人不足するとの予測も示した。AIを含めITの先端分野の人材不足が予測される。
本事業ではITスキルだけでなく、付加価値技術としてCADオペレータスキル、ビジネスマナー、コミュニケーション手法など幅広く学ぶことができる。IT業務への抵抗感をなくしインターネット、タブレット・スマートフォンを利用した報告や、蓄積させたデータを分析し提案へと繋げられる人材育成及びビジネスマナー系授業によりコミュニケーション能力を鍛え、安定就労に寄与する。